【ドルオタ】ありがとう東方神起~ペン卒は突然に編~

2008年、東の神に進撃された。

正確には2009年かもしれない。当時バイトしていた近所の電気屋さんでは、常に有線が流れていて、その中で気に入った曲を調べると、東方神起であることが多かった。

そこからネットで彼らのMVを漁り出し、あれよあれよという間に沼にハマっていった。

ファンクラブに加入、過去のDVDやCDを買い集め、初の東京ドーム公演も執念で拝み、ファンクラブイベントも当選。

オタ活の勢いは止まらない!そんな矢先に起こった分裂騒動。

3人と2人に別れ、一方が活躍中にはもう片一方は息を潜めているような状況であったのが、いつしか立場が逆転し、東方神起を背負った2人がどんどん表舞台に出るようになった。

2人の活躍は目覚ましいものがあった!本当に楽しかった2012年!

分裂の理由は色々調べてみたし、いろんな人の見解や意見を見聞きしたけれど、結局何なのかわからなかった。

何にせよ、元々5人全てを応援するタイプのペン(韓国語でファン)だったので、3人を見捨てることもできなかった。

2つのグループを同時に追いかける。

彼らを追っていた時、確実に私の世界は彼らを中心に回っていた。

 

ライブのスケジュールが発表されると同時に、自分の日程も組む。どの公演に行くかを選び、ホテルの少ない地域は宿泊先の確保に困難するため、チケットをゲットするよりも先にホテルを確保しなければならない、とか。友達と協力してどの公演を申し込むか手分けするだとか。前乗りするか、新幹線かバスか。グッズは当日販売だと売れ切れてしまうことがあるので、確実に欲しいものはファンクラブの通販で先に買っておく。淡々と手配は進む。

トンペンチング(東方神起のファン友達)と協力し合って手に入れたチケットの誇らしいこと。天井席ならライブの全体を見渡せるし、神席なら近くに彼らを目にするとができる。

活動が活発なときは毎日が楽しかった。頭の中は5人のことでいっぱいだった。

恐ろしいことだが、収入のほとんどをオタ活に注ぎ込んでいた。当時の給与は月に手取りで16〜7万。1つのツアーで最低でも4回は行く。遠征であれば交通費、宿泊費がかかるし、通販で買っているにも関わらず、当日のグッツ販売会場の雰囲気に当てられて、予定外のグッズも買ってしまうこともあったし、ライブ後の仲間たちとの打ち上げも外せないイベントだ。

片方だけならまだしも、もう片方のライブにも参戦するとなれば、費用は倍増した。グループ活動だけでなくソロでも動こうものなら、オタ活の忙しさは度を増していく。

ライブが終わってから地元に戻り、1日仕事をしたその日のうちに夜行バスで移動、別のライブに参戦。なんてこともあったし、それぞれのイベントやライブが同日に開催されることがあった日には、3つの会場を梯子した。自分必死過ぎ!だけどあの頃はそこまでしても彼らを拝みたい気持ちが先行していた。

財布は空っぽ、心は充実!という生活を送っていたのが、8年位だろうか…。

それはもうとてもとても楽しい時間ではあるのだが、少しずつ不安になってもいった。

彼らもそうであるように、自分も歳を取る。

全財産を彼らに注ぎ、貯蓄はゼロ。幸い実家暮らしだったから良いものを、いつかは実家から独り立ちしなければならないだろう。

そうなったとき、今までのようなオタ活はきっとできなくなるだろうし、むしろこのまま続けていくべきかも迷うようになった。

 

彼らに対する敬愛は常にあったが、熱量というのは時とともに衰えていくのを感じていた。

感じてはいたのだが、直視したくはなかった。ライブやイベントに行き、仲間たちと語り合う時間が自分にはかけがえないものだったから。それを失ったら自分には何も残らないような気さえした。

いくらそうやって目を逸らし続けていても、現実はふとした時に押し寄せる。

メンバーの熱愛報道だったり、親からの「またライブに行くの?」とでも言いたげな目線であったり。

ちょうど仕事にも行き詰まって転職を考えていた時期であったし、洋服を爆買いしてしまった結果70万円のローンも悩みの種だった。

何かを失わなければ、何かを得ることはできない。

そんな考えに到達した頃、私はトンから離れることを決めた。

何なら今は一旦離れるけれど、生活が落ち着いたらまた戻れる。という淡い期待も抱きながら。

 

そうしてこれまでとは全く違う生活を送り始めた私の目の前に広がるのは、ありったけの現実だけだった。

たまにチングから「あのライブ見た?」「ツアーに行く?」と連絡が来ていたが、情報難民には何も答えられなかった。

ひたすら現実と向き合った2年の間に、70万のローンは返済。今の仕事はこれまでの人生の中で一番稼ぎが良い(激務だけど)。自分にはあり得ないだろうと思っていた結婚もした。

だけど今の私には、夢中になれるものがない。

偶像であったとしても、四六時中胸熱にさせてくれていたあの5人はもう、いつのまにか心からいなくなっていた。

失う代わりに手に入れたものはあるけれど、ふとしたときに喪失感に苛まれることがある。

もう彼らの曲を聴いて、心と頭が一瞬にして奪われるような、1日中多幸感に包まれているような、あの日々は戻ってこないのかと思うと、自分は至極退屈な人間に成り下がってしまったなと思う。

切ないけれど、それが現実なのだ。

懐かしさを求めて、いつか彼らのライブに足を運ぶことがあるかもしれない。

だけどもうグッズを買うことはないし、ファンクラブに入り直すこともないだろう。天井席から「あーみんな歳とったな」などとしみじみ思うのかもしれない。

おそらく私がハマった人生最初で最後後のアイドル。

ありがとう東方神起

願わくば、お互いヨボヨボになったときにでも、過去のあれやこれやは全部流して懐かしいHUGでも歌ってくれ。