ボランティアとバイトでボラバイトは今も健在だった話 その4

 

pigeonmilk.hatenablog.com

 

ボラバイト体験談その4です。
ここではボラバイト中に起こった珍騒動をお話しします。

早朝、牛舎が水浸し

いつもの時間に牛舎へ向かうと、そこは大洪水でした…。
大洪水だったんです。雨が降っていたわけじゃありません。嵐や台風の仕業でもない。水道管が破裂したのか、通路が水浸しに!

眠気も一気に覚めるというものですよ。慌ててお父さんを呼びに行き対処してもらったものの、乳搾り前に水を掻き出すという重労働。なかなかのハプニングだったと思います。

こやしに落ちた仔牛

バンクリーナーという糞を落とす溝があります。回転ずしのラインみたいに糞を運びながら外の肥やしを溜めておく場所へ落とす仕組みになっている、非常に便利な文明の利器です。

その日、牛舎へ行くと母牛が1頭の黒い仔牛を産んでいました。こういうことがよくあります。
「かわいいねー」とほのぼのしながら掃除に取り掛かっていたんですが、途中でバンクリーナーが謎の停止。糞やわらが詰まって時々止まることがあるんですね。

お父さんが機械の調子を探りに外へ出て行った時でした。

「おーい、仔牛がもう1頭いるぞー!」と言うのです。

何事かと肥溜めに向かうと、黒い仔牛が糞まみれになった状態で発見されました。

そう、母牛が出産したのは双子の仔牛だったのです。だけど1頭しか見つからなかった。

おそらく仔牛はよたよたと歩きだし、バンクリーナーの溝に落ちたんでしょう。そして気づかれないまま流されていき、肥溜めに落ちた。そういうことです。

これの怖い所は、もしバンクリーナーが止まらなければずっと気づかないままだった!ということ。

無事に保護された仔牛はエフワンという種類で、将来肉牛になるのでした…。

仔牛たちの大脱走

牛舎には乳を出す母牛だけでなく、仔牛もいます。生まれたての仔牛から、思春期を迎えたような100kg越えの仔牛まで、さまざまです。
仔牛を飼育している部屋は泥のような糞でいっぱいなので、時々掃除をしなければなりません。

泥状便の中を移動しながら糞を吐き出す。その傍には何十頭もの仔牛たちがいます。たまに遊びをしかけてくる仔牛もいましたが、相手は100kgの巨体ですから、こっちは気が気じゃありません。しかも足元は糞でツルンツルンに滑る。逃げることもできないのに、仔牛は闘牛のように駆け寄ってくる。この恐怖ときたら。

そんな中、何とか掃除を終えて、夕方の乳搾りの時間を迎えました。

順調に乳搾りをしている最中、不意に外へ目をやると素早く通り過ぎていく謎のシルエットが見えたのです。

あれは…もしや…仔牛?!

「仔牛が逃げてるー!」

そう叫んだのは言うまでもありません。

慌てて外へ行くと、牛舎から抜け出した仔牛たちが行き場をなくして困惑していました。逃げたからといって、旅が始まるわけでもないのですね。
原因は、扉の締め方が甘かった。つまり私のミス!

やっちまった!と反省しつつ、すべての仔牛たちを集めに集め…何とか場はおさまりました。

印象深かったのが、ぽつんと佇んだ1頭の子牛。「おいで」と言ったら素直についてきて、自ら牛舎に入ってくれたこと。あれはかわいかったです。

命を狙われた子猫

牧場のオーナーのお母さん(ここではおばあちゃんとします)がおりました。おばあちゃんは猫がたいそう嫌いでした。というのも、若い頃に猫に咬まれたことがきっかけで、手が腐ってしまったんだとか(怖い)。

それからというものおばあちゃんにとって猫は恨めしい存在。しかし牧場には猫が集まってくるもの。

ある日、カラス避けとして仕込んでいた網に、子猫が引っかかっていました。
子猫を救いだし、仲間と一緒に愛でていたところ、おばあちゃんがやってきて言いました。

「殺せ」

あたりは騒然としましたが、おばあちゃんの意思は変わりません。おばあちゃんはどこからともなく袋を持ってきて、子猫を入れようとしました。そのタイミングで子猫は逃げ、おばあちゃんが大事にしている畑の中へ隠れてしまったのです。

ビニールハウスの横に水の入った容器があったのですが、おばあちゃんは「子猫を捕まえてそこに沈めろ」というのです。

このままでは恐ろしいことになると察し、おばあちゃんに言いました。

「私がやるから後は任せてくれ」と。

その後、おばあちゃんの目を盗み、子猫を逃がして事なきを得ました。

今でも思うのです。
おばあちゃんに伝えるべきだっただろうかと。

愛護動物を殺傷することは法律で罰せられることを。

 

素晴らしきボラバイト生活

普通の暮らしではなかなか体験できないことが、ボラバイトでは体験できます。

ボラバイト先にもよりますが、牧場がある場所はだいたい風景が美しく、夜は満天の星空が広がります。都会では幻の天の川が普通に見れます。

とにかく大自然。視界を遮るものはありません。本当に何もない。何もないのが良い所。多分。

都会暮らしに疲れた人の息抜きの場にはなるかと思います。ただしその場所にずっといれるか…と考えると、それはまた別の話にはなるんでしょうけど。

 

ボラバイトは一般的な就職と違い、誰でもいつでもウェルカムな所が多いと思います。

忙しい毎日に心が疲れたら、ボラバイトに行ってみてはいかがでしょうかっ。